コンビニで表紙のインパクトに一目惚れして買ってしまいました。だって、「労基署対策」ですよ?なんかもうベクトルが真逆すぎて…ブラック企業のための本なのかなと思ってしまいます。同時に、この本のタイトルって大半の経営者の認識がストレートにあらわれているだけなのかもと思ったり。法令遵守自体を「あるべき姿」と見ているからルールを守るのでは無く、飽くまで監督署が怖いからやる。試験勉強をする際に、課題参考書を熟読するよりも、過去問からパターンを見いだす方に力をいれるのとなんだか似ているような…
仕事とは
昔の職場で始業時間数分前に入ってきた同僚Bがいました。パソコンを立ち上げて、コートをロッカーにしまって、パソコンが立ち上がった後(10分経過)になにやら画面を確認して、ファイルを取りに棚に向かい、必要なものを引っ張ってきて始業時間から15分経過したころに漸く戦闘態勢に入れていました。そのBに対して上司Aが「始業時間までには仕事が開始出来るように出勤を心がけなさい」と叱責。Bはなんだか納得の行かない様子ですが、「はい、すみません」と答えて作業を続けました。見ていた私(当時は脳内がまだ85%ほどはオランダ人)は、「いや、絶対おかしいだろ」と思いましたが、脳内に定着しつつあった15%の日本人に制止され、口を特に挟みませんでした。
でも、やっぱりモヤモヤしていました。パソコンをつけっぱなしで帰ってはいけない、ファイルを出しっぱなしで帰ってはいけないとしてしまっている以上、パソコンをつけることもファイルをキャビネットから取り出すことも、業務をする上で必要な準備…すなわち業務ではないのか、と。お昼休憩時に、部署の全員でローテーションして誰かが電話番として残ることや、始業時間前に会議を設定して残業として扱わないとか、パートだからという理由で有給休暇が与えられないとか…雇う側の問題でもあるのでしょうけれど、雇われる側も自分の権利と義務をしっかり把握していないのが問題なのかな、とも思います。全体的に雇われる側に有利な法整備になっていると感じるのですが、そういう日本で過労死が出てくるのはなんとも悲しいです。
残業させる権利
読んでみて意外だったのが、これ。労働条件通知書に残業「有り」と明記されていれば、管理職は部下に残業を命じることが出来るとされています。同通知書に残業「無し」としている場合だと残業を命じることはできないが(お願いすることは出来る)、残業が出来る人と出来ない人とで処遇に差をつけることは問題無いとのこと。こんな抜け道があると、いくら同一労働同一賃金の原則があっても、残業可の人の基本給を残業不可の基本給の倍にするなどが合法的に出来てしまいます。なんだかなぁ~という感じです。あ、それとも雇う側としては「しめしめ!」と思うべきところでしょうか。
○○ハラスメント
ハラスメントについても、本書では扱われます。ハラスメントの話になると、決まって「業務上必要な指導なのにハラスメントと取られてしまうケースもある~」等言われますが、境界線がわかりにくいものではありますよね。本書でも「相手がパワハラと思えばパワハラ」と書いてありますが、結局これって根本の問題は「僕、今の部長の発言はハラスメントだと感じます」と真顔で言い返す風土が無いことが問題;その時点で既に一種のハラスメントが成立してしまっているのでは、と思います。
本書では最も分かり易い「バカ!」がパワハラとして取られやすい一例に挙げられているのですが、他にも分かり易いものはあるな~、と思います。人格否定(だからお前は○○なんだ)や決めつけ(君は○○だからわからないだろうが)等、日常茶飯事ですからね…でもここでもやっぱり、「決めつけないで下さい」と一言言い返せない空気が出来上がっちゃってるのが問題。難しいですね…と、話が逸れてしまいますのでこの辺にしておきます。
タイムカードの切り捨て…
うちみたいな小さな会社には、A●ANOの「シ゜シ゜!」という気持ちの良い音で打刻をしてくれる機械はありませんので、勤怠管理表は手作りです。うちではじめてスタッフさんを雇うときに、「労働時間って何分単位で切り捨てますか?」と聞かれて、質問の意図がよく理解できなかったのを覚えています。聞いてみると、前の職場では30分区切りだったとのことで、「いや、良いですよ、どのみちExcelで足し算だし…切り捨てるのって気持ち悪いじゃ無いですか」と告げると少しビックリした感じでした。本書にも、切り捨てはアウトと書かれていて、安堵。
むしろ労働者諸君こそ読むべき?
内容の一部を紹介しましたが、管理職が把握しておくべき内容であるのは当然のこと、雇われる側の方々も読むべきだと思います。主要メディアは労基法改正で変わるところにしか目を当てていませんが、現行法でも雇われる側としてやって良いことダメなこと、従わなければいけないことと従わなくても良いことは把握しておいて損は無いと思います。
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