表題の書籍を読んでみました。本業ではないとは言え、仕事をする上で何かと通訳や翻訳をすることがありますので、日本人ネイティブはどういったミスに陥りやすいのかに関する知識を深めたかったからです。本書は、46万稿の校正実績を持つ英文校正会社エディテージが執筆。ただし、本書を執筆するに当たり分析に処されたのは100本…このうち85本は英語の内容について、そして15本は体裁についてそれぞれ分析しています。また、前述の85本についても、前文では無く、各論文から無作為で1000ワード分の文章を抽出して分析をしています。多ければ良いというものではありませんし、何をもって充分とするのかもややこしいところですが、元データのボリュームとしてはちょっと少ないような気もします(会社規模からして特に)。また、本書の後半部分で論文の構成と体裁等々を暑く論じているのに、本書冒頭にある論文100本の分析結果の概要があっさりしているのは少々勿体ないです。お手本を示すチャンスが…
また、注意事項として、本書は飽くまで「日本人研究者が間違いやすい」ことについて述べています。「海外の研究者と比較して日本人研究者が間違いやすい」という分析や知見は期待しない方が良いです。このアプローチは賛否両論あるでしょうが、個人的には、変な先入観を持たせようとしないところ、そして英語論文執筆のお供として本書で「一冊完結」の位置づけは、評価できるところだと思います。オランダ人を含め、日本人以外のnon-nativeにもそのまま当てはまる内容もあります。英語には存在しない単語の使用は、オランダ人あるある;形式主語構文の乱用は、フランス人あるある;と、読みながら気付かされることがいくつもあり、面白かったです。
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さてさて、内容については、無理矢理トピック数を100にするために、分割してトピック立てされているものと、統合されているものとがちぐはぐなところに目を瞑れば、多くの事例が一冊に収まっていて何かと参考になるのでは無いでしょうか。強いて言うなら、言いまわしに関するトピックは、「堅苦しいもの使うな!」というトピックと、「インフォーマルな語句を使うな!」の両方があり、説明が簡素なのでなかなか応用が難しそうです。いわゆる「フィーリング」が問われるところだと思います。読書量を増やしてカバーすることを推奨したいところですが、正直日本人以外の研究者、そして英語圏の研究者の投稿論文でも散見されるミスもあります。一応、「重要度」の目安も本書では示していますので、校正の優先順位の参考にはなるかも知れません。
また、執筆後の投稿プロセスについても、巻末で少し触れているのは親切です。本命のジャーナルにリジェクトされ、他のジャーナルに再投稿する場合のよくあるミス、査読コメントへの対応などについてサクッと書かれています。ページ数は少ないですが、今はグーグル先生のおかげで様々なフォーラムやFAQへのアクセスが容易ですし…このくらいで良いかな、とも思います。
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