同じ英語、異なる会話

外国語
Pictured: Japanese culture

Harvard Business Reviewに掲載されたGetting to Si, Ja, Oui, Hai, and Daが興味深かったので紹介します。取引が成立しようとしていて、セールスの教科書通りに取引内容を繰り返すビジネスマン。するとしばしの沈黙の後、相手からは「私はやると言いましたよね。信用できないと思っているのでしょうか」という返答がきて。取引は、なかったことになってしまったという悲しいエピソードが冒頭で紹介されています。

記事の文脈から、交渉は英語で行われたかと思われますが、同じ英語で会話しているからと言って、同じ文化を共有することにはならない良い例だと思います。誠意を示そうと即答したつもりが、間を重んじる文化では失礼と受け止められ、シンガポール(うろ覚え)で交渉に失敗した人の話を思い出しました。イギリスで商談をして、ある程度手応えがあったのかと思っていたのに、あとから友人の指摘で実はボロクソ言われていたことが判明した、というのも有名な話です。

Pictured: Japanese culture

図1:日本文化

変な言い方になりますが、日本人はこの点においては得をしていると感じています。日本語を話せる全人口が1億2千万程度という数字から、最低でも95%は日本国在住の日本人と見て良いでしょう。日本語と日本文化というのは、ほぼセットになっています。そして、日本語を話せる外国人も、大概は日本文化に合わせてきます。何より、日本語以外の言語で会話をするとき、日本人は相手側に「日本人らしい感性」は期待しないものだと思います。対して、米国の方々は大変な苦労をされていると思います。米国自体が多民族国家というものも恐らく関係して、外国との交渉は同じ英語でも文化が違う、通用しない言い回しや、日常的に使っている言い回しが失礼にあたる可能性もある、ということは誰かに言われなければなかなか気付けないことです。指摘されたとしても、すぐに理解して、実践できるかも怪しいです。自分がいままで当たり前の様にやってきたことを否定されている訳ですから。

Pictured: US culture

図2:アメリカ文化

日本在住のアメリカ人、エルトン(仮名)から聞いた通訳のエピソードです。米国とのテレカンに同席することになった彼は、となりに座っていた日本人の丸山さん(仮名)と通訳の是非について話していました。丸山さんは、英語が非常に堪能だったため、二人で話し合って、通訳は挟まないといことになりました。ところが、いざテレカンが始まるとアメリカ英語特有の言い回しがバンバンと出てきます。エルトンはこのような英語が丸山さんに通用するはずもないことを察して、「標準語」で会話するようにお願いをしようとしたその時、スムーズに進まない協議にイライラした先方が「おい、エルトン、俺の言ってること通訳してくれな!」と言い、場が凍りついたそうです。幸い、エルトンはプロで、冷や汗をかきながらも、丸山さんの英語力が高レベルであること、米国特有の言い回しは避けてもらうこと、を淡々と説明したそうです。その後、会議はスムーズに進んだようです。指摘されるまでは、気付けないものなのです。

さて、元記事では、いくつかの国を非常にざっくりと、X軸に同調傾向、Y軸に感情表現でプロットしています。これはこれで少々極端な単純化ではあり、文面から集計過程が明らかにならないので解釈に困りますが、米国が唯一真ん中を陣取っているあたり、米国の方から見たらこのようになっている、ということなのでしょうね。著者は、感情表現と同調傾向は反比例の関係にあるわけでは無く、感情表現が豊かでも同調傾向が強い文化もあることを指摘します。確かに、オランダ人は、対立を避けようとはしませんが、交渉の場で感情的な話をすることもあまり無いように思えます。

尚、この表では、日本人は商談の場で感情を表に出さないということになっていますが、著者からはそのように見えるということなのだと思います。表情というシグナルもやはり文化依存で、それを正しくキャッチするのもある程度の訓練が必要なのだろうな、と思います。むしろ、見方によっては米国の方々のほうがドライだと言えるのではないかな、と感じていたりもします。日本人を真ん中に置いて表を作り直した場合、全ての点が左上にササっとずれるとは到底思えませんし…

コメント

タイトルとURLをコピーしました