Excelで充分じゃない?

データマネジメント

一部ライセンス費が無料のものもあるとは言え、直接的にも間接的にも、EDCを運用するのは何かとリソースがかかるのは事実。現場がEDCの導入や運用に四苦八苦しているときに、主にアカデミアの現場でよく聞かれるというのが、タイトルにある言葉です。やっとの思いで自ら治験を走らせたり、臨床研究にモニタリングを導入してみたり、と大変な思いをしている方々には冷たい言葉に聞こえることでしょう。自分も、出先でこの言葉を聞くことがあるのですが、基本的に「そうですね」と答え、否定はしないです。「え゛」って思われる方もいるかも知れませんが、本気でそう思います。「Excelでできるものなら」、という但し書きはやんわりと付けますが。

また別の雑記で書きたいと思っていますが、僕もEDCが無い環境でExcelのVBAを駆使してワークシート生成マクロを作っていました。自分で言うのもなんですが、かなりの優れもので、検査項目と実施のタイミングを入力するだけで、CRFっぽいものが「ポン!」と生成されました。10人~20人被験者がいる場合に、全被験者の全検査の実施時刻を大きな時間割表で出力する機能も入っていました。ITのトレーニングを積んだわけではないものでもここまで作れてしまうので、機能面ととっつきやすさにおいては、Excelは凄いです。少しEDC構築の経験のある方なら、ここで「監査証跡はどうするの?」という疑問を持たれると思いますが、それも作ろうと思えば作れます。記述するだけならExcelExperts.comさんで紹介されている下記のコードをカスタマイズして利用できます。

 

ただ、ここから色々と問題が出てきます。拡張性や同時接続についてはExcelではほとんど対応出来ません。拡張性はまだ、定期的に使わなくなった部分をAccessに書き出す(これももちろんマクロで組めます)であったり、複数Excelを同時起動してカバーするなどの荒業は考えられますが、同時接続はどうにもなりません。見読性も、Excelではどうにもなりません。前述の監査証跡は単に変更を時系列に記録しているだけで、特定の項目の変更履歴を表示する事には不向きです。では、同じく安く使えるMS Accessで…という話になりますが、MS Accessはプログラミングの敷居がExcelのそれより格段に上であるのに加え、同時接続もある程度までしか対応出来ません。この時点で既に、プログラミングによる間接経費を考えて、市販のEDCより安くなるかが怪しくなってきます。そして本格的なデータベースソフトは、プログラミングの敷居も、維持管理に必要となってくる知識も、必要になってくるハードウエアも、MS Accessのそれとは比べ物にならないくらいレベルの高いものが要求されます。

「Excelで良いだろ」等の発言の背景には、多くの場合そもそも上で述べた様な機能が必要だと言う認識が無いから、だと思われます。認識のズレは、基本的には相手側が自分で気付くまではなかなか解消されない、というのが、長年(?)トレーニングを実施してきた中での僕の考え方です。ですので、突かれた時には「そうですね、でもExcelだともっと大変な気もするんですよ」と答え、いつの日か「なんでそう思うの?」と向こうから聞いてくれるのを待つしかないかも知れません。なお、その時にはそちらまで足を運んで「データマネジメントのHOW&WHY」のレクチャーを行わせて頂くこともできますので、ご希望でしたら遠慮なくお申し付け下さい(恐縮ですが、旅費はご準備願います…)

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