使いやすいEDCというのは、どういったものなのでしょうか。EDCを広く、データマネジメントをお手伝いするソフトウエアと捉えた場合、そこには色んな側面があります。CRF(EDCの入力画面)の作成・構築が容易、データ入力が素早くできる、クエリ処理がしやすい、データ出力のオプションが充実している…挙げ出すときりがありません。それぞれの機能の有無や良し悪しより、誰が使うのかというのを考えた方が良いかも知れません。データマネジメント担当に取って「使いやすい」、生物統計担当にとって「親切」…その中で、とりわけ実施施設に取って使いやすいということにつながるのが、表題にある「AJAX」という技術です。EDC全体の利用時間の、施設スタッフが占める割合は相当のはずなのに、施設のユーザビリティーってなかなか注目されないですよね…というのはさておき!
さて、このAJAXというのが何なのか。インターネット上で、会員登録等々を何度かこなしていくと、サイトによって便利・不便があることに気付くと思います。名前、住所、電話番号、その他の事項を入力していき、いざ「送信」をクリック。すると、先に進むのではなく、同じフォームが表示され、色々なところに赤い文字でエラーが表示されます。「郵便番号は全角で入力して下さい」や「氏名(読み)にカナ以外を入力しないで下さい」と言ったエラー文に沿って入力内容を修正して、再度「送信」をクリックし、エラーがない時点ではじめて次のステップへと進みます。こちらの仕組みが「従来」のやりかたです。AJAXという技術では、入力者が「送信」というボタンを押す前から、逐次入力内容を裏で小出しに送信して、間違いがある場合はその場でエラーメッセージを表示するやり方です。結果、送信ボタンを押す前から、郵便番号が6桁で入力されていたり、生年月日の誤入力をその場で入力者に知らせることが出来ます。フォームの最後まできて、「送信」ボタンを押すまでには、大体のエラーは未然に対応できています。

保存前にAJAXを用いて不備を知らせる仕組み(上)と、保存後に不備を知らせる仕組み(下)。後者の方がステップが多い以外に、保存時にページの再読み込みも発生するため作業がもたつく。また、前者では保存前に誤入力にも気付きやすい。
前者の「従来」のやりかたは、未だに多くのEDCに実装されているやりかたで、先日の投稿にて触れた通り、多くの医師・コーディネーターのEDC嫌いに一役買っていると思います。というのも、この仕組みを採用していることが、オートクエリ地獄の原因です。データが送信(EDCで言うところの「SAVE」)されてはじめて、チェックが行われ、結果が入力担当者側に返されます。この仕組みでEDCが動いている限り、自動的に判別できる類いの誤入力も、オートクエリという形式を取らざるを得なくなります。後者の「AJAX」という技術を用いれば、多くの場合オートクエリを発生させる必要はなくなります。なぜなら、エラー内容を確定前から画面に表示させ、エラーが解消されない限りは保存をさせない(あるいはコメントが入力された上でのみ保存させる)、と言うことが可能になるからです。OmniComm SystemsのTrialMasterに実装されているのはもちろんのこと、PromasysのWebCRFも、保存の仕組みがTrialMasterのそれとは異なりますが、同じ仕組みで動いています。
応用することで、生年月日と同意取得日からの年齢や、身長・体重からのBMIの自動計算結果を瞬時に表示することや、特定の項目の値・選択肢に応じてフォームの他の値の表示・非常時や入力の可否をコントロール出来たりします。施設側のユーザーに取っては、不意なミスが激減するため、仕事がさくさく進む…ことはもちろんですが、イライラが減ります。末端のユーザーが一番恩恵を感じやすいですが、EDCを運用する側にとっても、実施施設の業務効率向上は良いこと…のはず。だが、EDC構築部隊が、オートクエリという従来の仕組みと、AJAXを用いたエラーメッセージのどちらを利用するか、ケースバイケースで判断しなければいけなくなるという煩わしさは少しあるのかも知れないです。なお、AJAXは、一般的に言って何も新しい技術ではないのですが、EDCはじめ、ビジネス利用のソフトはサービスインまでが長いため、最新の技術がなかなか反映されにくいところはあるのだと思います。
コメント
Ajax、僕も使用しています。
ユーザーの入力チェックの他に、非同期通信なので画面をあまり再描画させたくない時や、レスポンスを分散させたい時に使ったりしますよね。
いわしさん、コメントありがとうございます。Web入力に変革をもたらしたAJAXも、臨床試験用のシステムですと、まだまだこれからと言うイメージなんですよね。