オランダの中央倫理委員会(CCMO)

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以前こちらでも話題にさせて頂きましたが、サラッと扱うには少々もったいないので専用記事を起こすことにしました。CCMOは、Centrale Commissie Mensgebonden Onderzoekの略で、直訳すると、ヒト対象研究(之)中央委員会です。倫理というキーワードは入っていないですが、当委員会は倫理審査以外にも色々な役割を持っています。ですが、これら全てに言及していると長くなるので、今回は中央倫理委員会という側面に絞りたいと思います。

CCMOって何?

ご存知の方も多いと思いますが、軽くおさらい。日本含め多くの国がそうであるように、オランダでは臨床試験を実施するにあたり臨床試験の倫理性や科学的妥当性をどこかで審査してもらう必要があります。オランダでは、それがMREC(英語のMedical Research Ethics Committeeの略)と呼ばれる委員会です。プロセスという側面においては、日本の治験審査委員会と同じ役割になりますが、大きな違いが二つ:

  1. MRECを設置するにはCCMOが設定した条件をクリアしなければならない;また、設置の条件も厳しいものとなっている
  2. 多施設共同研究であっても、臨床試験は一箇所でのみ審議・審査され、その結果は参加施設全てに対して適応される;一度審査が通れば、参加施設の一つが再審査を要求することはできない

全委員会で年間1800件

オランダには現在23(CCMOを含めると24)の倫理委員会があり、年間1800件程度の「研究」を審査しています。内訳は、医薬品、その他の介入研究、観察研究でそれぞれ三分の一ずつを占めており、医薬品研究のうち6割が企業試験、4割が医師主導試験です。この割合は、年毎で大きな変動はないとのこと。CCMOは、この中の一部(年間40件程度)のみを審査しています。

CCMOは特殊な試験のみ審査

一般的な研究の倫理審査は、基本的にCCMO以外の倫理委員会にて行われます。CCMOは、いくつかの法令の定めにより、一部の特殊な研究の審査のみを行います。例えば、アヘン法の対象となる薬物を用いた研究、未承認ワクチンの研究、遺伝子治療、胎児が対象となる研究、未成年または知的障碍者が対象となる研究のうち治療効果が期待できないもの、等、倫理面においても科学面においてもかなり特殊な知識と判断能力が要求されるものです。特殊な研究だけあって、審査が通らないものも一般の試験に比べて(相対的に)多いです。近年の審査で却下されたものとしては、例えば未成年におけるオピオイド誘発性便秘の治療を目的とした新薬の薬物動態研究や、瘢痕組織の肥大の治療を目的としたアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤、などがあります。

CCMOの倫理審査は無料

MRECの運用には当然経費がかかってきますので、MRECの審査は有料になっています。審査料はMRECによって異なりますが、一般的には多施設共同研究と単施設研究、そして医師主導と企業主導でそれぞれ料金が異なります(詳しくは各MRECのページを参照)。審査するMRECは、審査を申し込むもの(企業試験なら企業)が基本的に指定することになります(最近のEU内の流れで、これが変わってきていますが、また別の機会に)。上述の通り一部の試験においては、CCMOでのみ審査が行われますが、CCMOはオランダの厚生スポーツ省の直下であることが関係しているのか、審査料は設定されていません。

誰が見張りを見張るのか

重大な責任を背負わされている組織ですが、CCMOもまた5年おきに厚生スポーツ省に対してレポートの提出が求められており、監査を受けます。自己評価と監査がセットになっているようなイメージですが、一昨年で三度目となり、その中で将来のEUの法体制への対応についても議論が行われ、方針が決定され、抱負が文書化されます。次回は2019年で、2014~2018の期間についての自己評価が行われ、European Directiveへの対応の成果についても記述されると思われます。

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